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(15)「適度」なスピリチュアル生活

2012年11月07日

例えば『精神分析とスピリチュアリティ』の中で、精神分析医である著者のネヴィル・シミントンは、以下のような患者の例を挙げています。


<引用開始>
 私は以前、上司(仮にスミス氏と呼んでおこう)から食い物にされていた女性を診ていたことがある。
上司は彼女が昼食時間に働くことを当然のように期待した。
何時間にもわたって彼女を引き留め、手紙を書き取らせた。
残業代はいっさい与えなかった。
彼は彼女を下等な対象であるかのように扱い、自分のために平気で屈辱的なことをさせた。
あるとき彼は彼女に命じて車のトランクにあったびしょ濡れのカーペットを自分のオフィスに運び込ませたが、そのせいで彼女はスカートとブラウスを濡らし汚してしまった。


 面接室に入ってきたとき彼女は、あたかも臭いゴミ捨て場の脇を通りぬけようとしているかのように顔をしかめた。
(彼女の話に対して、私に)解釈されたときも、あたかも私が何も言わなかったかのようにふるまった。
職場でスミス氏に食い物にされたと彼女が語ったのとまったく同じように、私も彼女に食い物にされ、生ゴミ容器がお似合いのクズ同然の扱いを受けたかのように感じた。


 このことを指摘してみたが効果はなかったので、ある日、より効果的に証拠を整理し直し、それをすべて提示してみた。
彼女はしばし黙り込み、歯を食いしばりながら「たぶんおっしゃるとおりなのでしょうね」と言った。
翌日彼女は驚いた様子で、スミス氏がこれまでとまったく違う扱いをしてくれたと語った。
たとえば彼は、ちょうど1時になる頃に時計に目をやり「おや、昼休みだ。ちゃんとお昼を食べてきてくださいよ!」と言ったのであり、夕方手紙を口述していて5時半になったことに気づくと「おや、もう5時半だね。残りは明日にしよう」と言って、温かい笑顔で帰宅する彼女を見送ってくれたのだった。


上司がこの女性に優しくふるまったのは、彼に対する彼女の情緒行為(浜野注:感情面での反応の仕方)が変化したために、前とは違う反応をするようになったからだった。
しかし彼女自身は自分の行動の変化にまったく気づいていなかったから、スミス氏のふるまいに仰天したのである。(中略)

書いた人 浜野ゆり : 2012年11月07日 06:08