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不眠対処に立ちはだかるネット、携帯

2012年06月04日

以前から感じていることですが、テレビ、インターネット、メールから離れる時間が短いほど、不眠から回復しにくい傾向がみられます。


前回の記事で不眠の短期行動療法の本を紹介し、そのポイントの1つが「眠くなるまで床に入らない」「床に入って15分もしたらきっぱりと起き出し、何かしながら眠気の来るのを待つ」というものなのですが、その際には神経を興奮させるような行動や、逆に神経を麻痺させるような行動は避ける、というコツがあります。


後者の代表は、飲酒です。
アルコールは一瞬ストレスを忘れさせ寝つきを良くしてくれる場合もありますが、眠りは浅くなり、寝付いたと思ったら1-3時間で覚醒してしまい、しかもうつ状態を誘発・悪化させます。

前者の中には「アップテンポな音楽を聴く」「激しい運動をする」などがありますが、よりやってしまいがちなのが「画面を見つめること」すなわちテレビやネット視聴、メールのやりとり等なのです。

これには大きく分けて2つの理由があります。
1つには、視聴した内容で刺激を受けて神経が高ぶってしまう。
2つ目は、明るい画面を夜間見つめることで脳の松果体という場所から分泌されるはずのメラトニンというホルモンが減少してしまい、寝つきの悪さ、寝起きの悪さを引き起こし、睡眠・覚醒リズムがどんどん後ろにずれていきます。
これにより、ついに昼夜逆転生活に入ってしまいます。

一般に松果体に影響を及ぼすのは太陽光や、非常に強いライト(2500ルクス以上)といわれ、このため冬季うつ病や昼夜逆転への治療として高照度光療法というのがあるほどなのですが、とはいえ、それよりもずっと弱い光でも、光感受性の強い体質の人の場合、睡眠リズムが乱れる可能性は十分あると考えられます。


このため不眠を改善するには就寝の少なくとも1-2時間前からは画面を見ないようにすることが必要ですし中途覚醒時にもそうなのですが、これに代わる手段を持たない人には行動療法が継続困難になり、結果として不眠も改善できなくなりがちです。


この点から見ると、若い世代、特に20代以下の人たちが心配ですね。
読書の楽しみを知っている人なら、それなりに有意義に時間を過ごせますが、読書習慣がない人だと、他にやることのオプションがなく、すぐ携帯やパソコンに手を伸ばしてしまうでしょう。


それでも自活し一人暮らしの人ならば、毎日のこまごまとした家事や雑務があるので、それを片付けることで「睡眠不足が心配だけど、これこれができた」という達成感を得られますが、親と同居する家に引きこもり、家事も親任せとなると、ますます回復が難しくなるでしょう。


皆さんは普段、どのくらい「画面」を見ずに過ごせますか?
たまにパソコンがクラッシュしたり、携帯を家に置き忘れてきただけで、結構不自由するのは事実ですし、実際現代生活はこうした(モバイルを含めた)インターネット環境なしでは相当支障をきたします。
特に仕事の障害、収入減にも直結しますし、去年の震災でも知られるところになりましたが、ネット環境がないと災害情報へのアクセスや発信にも支障が出て、それが生存率にも影響します。


ただ、ネット以外で自分を楽しませたり、じっくり考えたり、生活需要を満たしたりする手段もいつも何割かは生活時間の中に確保するようにしないと、体力はもちろん、思考・判断力、睡眠能力、味覚・聴力・視力といった、生きていくための力が相当退化してしまうのではないでしょうか。


睡眠障害に悩む人はまずは、「就寝1時間前は画面を見ない」ことから始めてみてはいかがでしょう?
そして、


・読書(マンガや雑誌も含む)
・オーディオブックを聴く(iPodや、iPhone などのスマホはもちろん、CDに焼いて聴くことも可能。
 オーディオブックのダウンロード専門サイトもあります)。
・マッサージ、ストレッチ(ゆったりした動きで、息が上がったりしない、疲れを感じない程度なら問題ありません)
・瞑想(それ用の一般向けCDも多く通販されています)
・ゆったりとした音楽を低めの音量で聴く
・家事、雑務
・編み物をはじめとする手芸や、絵を描く、塗り絵をする(大人向けの塗り絵帳も販売されています)


などは、お勧めです。
各自でいろいろ試してみてください。

書いた人 浜野ゆり : 2012年06月04日 06:25