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思考の暴走に振り回されないために

2009年08月19日

あれは高校生の頃、確か犬養道子氏のエッセイだったと思うのですが、その中に
「心配ごとがあっても、今目の前のことに集中するために、心配事を一時しまっておく『冷蔵庫』を心の中に作ろう」
という文章があって「なるほど~!」と感銘を受けたことがあります。


これまでも何度か述べてきたように、人を不安や憂うつにするのは、目の前のリアルタイムな生活から意識が離れ、過去への後悔や将来への不安を繰り返し考えてしまう「思考の反すう」をしてしまうことから大部分発生しています。
このため何百年、いやそれ以前から多くの賢人たちが、何とか目の前のこの瞬間に意識を留めるための工夫や訓練法を開発し継承してきました。


その代表的な手法の一つが「たとえ数分間でも呼吸にだけ意識を集中してみる」で、呼吸の代わりにロウソクの炎をじっと見つめてその映像に集中するというのもあります。
また現在に集中するためのバリエーションの1つとして、前述のように「心配事を一時しまっておいて、後で考える」という形もあります。
本当はいっそ全く考えない方が生産的なのですが(具体的な対策がないことを考えるのは単なる時間とエネルギーの無駄使い)、それでもつい考えてしまう場合はせめてその頻度を減らすための工夫、というわけです。


冒頭の文章で冷蔵庫が使われているのは、蓋が密閉性であるのと、「中身を冷やし固める、勝手に動き出さないようにする」という感じを想像しやすくするためと思われます。
犬養氏以外にも似た対策を書いているものはいくつもあり、冷蔵庫の変わりに蓋の重い頑丈なトランクをイメージしたり、考えるのも例えば「夕食後1時間だけ」と決めてそれ以外は蓋をロックしておく、など様々なパターンがあります。
自分に一番フィットするイメージを選ぶと良いでしょう。


誘導瞑想のCDなどを聞いていても、過去の記憶や将来への心配事その他…いわゆる雑念にとらわれてしまうと瞑想に集中できません。
でも心の常としてこうした思考の反すうは必ず出てくるので、それを織り込み済みの上で、それに入り込んでしまうのではなく上手にやり過ごせる時間を少しずつでも増やすことが、心の安定のために必須の練習となるのです。

書いた人 浜野ゆり : 2009年08月19日 07:05