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機嫌の保ち方(2)

2008年01月30日

嫌なことが起こってしまった時の自分の対処の仕方によって、その後の気分が大きく変わってきます。
例えば出かけようとして家を出たところで、ジャケットのボタンが取れて落ちてしまったとしましょう。
ここで「なんてタイミング悪いの!全く嫌になる!」などと考えたり、口に出すと、ネガティブな気持ちがますます強まり、自分の不快感が増してしまいます。
舌打ちなどの動作も同じ作用をもたらします。


逆に同じように嫌なことが起こっても「あらら」という程度の反応にし、そのことを考えるのは最小限にして次の行動に集中するようにすると、嫌な気分が早く薄れます。
この時に2-3回深呼吸をしたり、口の両端を少し持ち上げて微笑を作るようにするのも有効。


「おかしくもないのに無理に笑顔を作るなんて嘘っぽい。自分に無理強いしているのでは」と思われますか?
しかし、人の心と体はつながっています。
別に楽しくなくても笑顔を作ると気分も改善しやすく、逆に顔をしかめたり肩を落とすと憂うつ・怒り・不安・悲しみといったネガティブな感情が湧き起こりやすくなるのです。
だからこそ、人が相手を無理やりにでも従わせたい時、「気をつけ」「正座」「土下座」等々、不自由な姿勢を長時間強制する、ということがよくみられます。
こうした姿勢を続けることで相手の意思が次第に弱り、受身で従順になっていくことが、体験的に知られているからです。


これに対して、怒りや不安、悲しみといったネガティブな感情が湧き上がって来た時に、あえて微笑を作ったりゆるい姿勢を作ると、怒り続けるのがばかばかしく、面倒になってきて、短時間で切り上げやすくなってくるのです。
こうした原理を利用しない手はありません。


それに感情というものは元来、瞬間瞬間の一時的なものであり、それに執着していつまでも留めておかない限り、次々と流れていくものです。
子供や動物はこの感情の本来の姿にかなり忠実で、楽しいことも悲しいことも怒りも、一時的に感じるだけで終わります。
小さい子供の様子を「さっき泣いたカラスがもう笑った」と大人がよく苦笑していいますが、この「感情を流す知恵」を大人は、長年の間に忘れてしまう人がほとんどです。


それはあるショッキングな体験をした際に「二度とこんな目に遭わないように、この状況を、その時の感情を忘れないようにしよう」と、無意識的に自分にいい聞かせたり、楽しいことがあった際に「いつまでもこの状態を失いたくない」と思うことの積み重ねで、そうなっていくと考えられます。
これは特定の感情への執着といえるものであり、これが続いた結果、過去に起こったことへの後悔や罪悪感にとらわれます。またその感情を未来に投影して不安になります。
しかも、それを何十回も毎日のように繰り返してしまう…という、心の困った癖として習慣づいてしまうのです。
実際、うつになりやすい人はこのように「ネガティブな感情を反芻して(繰り返し思い浮かべて)しまう」のが一つの大きな特徴ということが、ここ数十年の研究でわかってきています。


さて、「感情を流し、執着しない。次のことにできるだけすぐ目を向ける」といった、いわば「気分転換法」が、機嫌の保ち方のコツその1です。
もう1つのコツ「嫌な出来事をできるだけ嫌じゃないものと感じる」ことについて、次回述べましょう。

書いた人 浜野ゆり : 2008年01月30日 06:36

この記事へのコメント

Gさん
コメントを真にありがとうございます。
そして過分なお褒めのお言葉、大変光栄です。
十牛図には3-4年前に、最もハマっていました。
絵を描くことによる内面の癒しや変容を実感できて、とても貴重な体験でした。

書いた人 ゆり : 2008年02月02日 09:31

ぶちさん
書き込みありがとうございます。
「舌打ち菌」とは、面白い発想ですね!
「相手の好ましくない言動を、(こちらのせいではなく)相手自身の勝手な特性だ」と思って気にしないようにするというのも、次の記事で述べている「認知療法」や「リフレーミング」といった手法でも勧められているコツの一つでもあります。

>仰るような心と体のつながりを考えると、「人に馬鹿にされたくない、上位に立ちたい」という気持ちが自分に常にあるのかしら、と思いいたりました。

そのようにご自分を客観視できるのは、とても素晴らしい能力だと思います。
一度他の人とのご自分の対話の場面を友人などに頼んでビデオで撮ってもらって検証すると、どのように修正すれば良いかわかりやすいと思いますよ。

書いた人 ゆり : 2008年02月02日 09:13

 ゆり様

 こんにちは!初めてこのブログに飛んできました。

 あなたの「十牛図」とてもステキですね。今まで見た「十牛図」で一番好きです。
 で・・・僕のブログのリンクに貼らせていただきました。ありがとうございました。
 また、遊びにきます!

書いた人 G : 2008年02月01日 10:46

年とともに少しは改善したかと思うのですが機嫌が気分で変わる自分は色々と身につまされるお話でした。

目の前に舌打ちがクセの方が座っています。
電話一本取り次がれても舌打ちなので、正に無くて七癖、雰囲気が悪くなるので舌打ちは心の中だけにすればいいのに、と思ってしまいます。
今更進言する人も居ないし考えついたのは
「殆どの場合、心のそこから不満に思っているわけではない。実はあの人は”舌打ち菌”に感染しているのだ!」
という説明です。
この「菌感染説」はいろんな事に応用できて、結構周りも笑ってくれましたので最近のお気に入りです。

ところで、先日別の人に「あなたはいつも人と話す時アゴを上げて上から見下すようにしている。相手はきっと馬鹿にされていると思っている。見下ろして話すクセを直せば周りの態度が変わって物事がもっとスムーズなのでは?」といわれ、自分の無くて七癖に大変ショックでした。

仰るような心と体のつながりを考えると、「人に馬鹿にされたくない、上位に立ちたい」という気持ちが自分に常にあるのかしら、と思いいたりました。

書いた人 ぶち : 2008年01月31日 03:16