ブックレビュー『野菜の食べ方・選び方』
2006年08月28日
先日、『野菜の食べ方・選び方』(佐藤務ほか、彩流社)を読みました。
最近は野菜の本といえば「食べるクスリ」「食養生」といったものから「子供のお弁当にいかに取り入れるか」といった主婦の知恵を発揮するものまで各種出ていますが、この本はその中間に位置する印象です。
特に序章での「野菜が『体に効く』とはどういう意味か」について
「野菜は薬ではないので食べるだけで病気が治るということはありません。
野菜の機能性と健康に関して今まで発表されてる研究結果をみても、効果があるかどうか、一致した結果はまだ出ていません。(中略)
このことから個別の成分というよりもまだ解明されていないさまざまな野菜の機能性成分が相互に影響し合って、病気予防に効果があるのではないかとみられています」
という説明はとても中立的・理性的で、ともすると「○○症状にはこの野菜!」とばかり、テレビで紹介された途端にその日のスーパーの棚からそれが売り切れるという日本の国民性に釘を刺しているようで、なかなか痛快でした。
キーポイントは「多種をバランス良く」「1日5皿の野菜料理を目安に食べる」ことなのですね。
またタイトルにあるように、野菜の選び方や、調理を含む取り扱い方をまとめてあるのも重宝です。
女性ならまあ大体のことは母親が伝授してくれるわけですが、結構うろ覚えや勘違いもあるもの。
例えばトウモロコシは買ってすぐに食べる(食べきれない場合も、まずは火を通してから保存する)のが重要だが、逆にカボチャは収穫して1ヶ月後の方が美味しいので店頭ではヘタの乾燥したものを選ぶと良い、など。
私の場合、ズッキーニがカボチャの仲間と知り、驚きました。
ちなみに私は漢方とハーブ療法も学んできましたが、それらを踏まえた上で身近な野菜としてのプロフィールを知るのも楽しいものです。
例えばゴボウ。
日本人にはしょっちゅう料理に登場する野菜ですが、あの香りからわかるように、ゴボウも立派なハーブ=香草です。
この本では
ゴボウ→食物繊維が非常に多く、腸を掃除して便通を良くする。
利尿効果の高い食物繊維イヌリンを含み、腎機能を高めて体のむくみを取る
といった説明があり、
一方でハーブ療法の本では
ゴボウ(バードック):
若い茎と根の浸出液は強壮薬や催淫剤として使う。
根は血液浄化作用があり、風邪やインフルエンザの予防薬となり、皮膚疾患やリウマチの原因となる毒素を取り除き、膀胱炎や尿路結石を治す
と断言してありました(笑)。
実際は、同じ「ゴボウ」の訳語でも学名が微妙に異なることはよくあり、つまりその場合は亜種なので、含有成分や働きはかなり変わってきますが。
とても興味深いものです。
つい先日も、あるセミナーで、最近の野菜は30年前の同じものの数分の1の栄養素しかないという話を聞いたばかりです。
特に今時のハウス栽培のピーマンは、もはや淡色野菜レベルの栄養素量とのこと。
こうしたことを考えると、数年に1度は野菜のプロフィールについて、頭の中の情報をアップデートしておく必要があると思われます。
そうした意味で、この本は手元に置いて日々参照するのに適した一冊といえるでしょう。
書いた人 浜野ゆり : 2006年08月28日 22:27
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